お父さんとお母さんはメダカを買いに行きました。お父さんは1週間ほど前から庭にメダカ鉢を埋めて水を満たしていたのですが、今日の結婚記念日にメダカを買うことにしたのです。

園芸店で水草を買った後、近くのペットショップに行くとメダカがたくさん泳いでいました。お父さんがどの子がいいかなぁと見ていると、不思議な値札があることに気づきました。1匹30円なのに1ペアで100円と書いてあったのです。
バラで買うと全部がオスもしくは全部がメスになるリスクがあります。メダカを飼う楽しみのひとつには子メダカを増やすこともありますが、それにはオスもメスも必要です。そのためにはペアで買った方が確実です。お父さんは考えました。ペアで6匹買うと300円、バラで5匹買うと150円。1匹と5匹が同じ値段になります。バラで5匹買った場合、全部がオスもしくは全部がメスになる確率は16分の1です。16人いたらその内のたった1人が神様から見放される計算です。
(16人か……)
お父さんはいろんな人の顔を思い浮かべていたようでしたが、意を決したようにスタッフのお兄さんに「バラで5匹ください」と言いました。
帰りの車の中で、お母さんはメダカの様子をじーっと見つめ、「みんな同じ動きしてるからさ、みんなオスなんじゃない?」と言いました。お父さんは「オスもメスも動きは一緒だろ」と笑っていました。

お父さんはメダカ鉢に入れる前に袋の中をジーッと観察していましたが、そのまま水温を合わせるために袋ごと鉢に入れ、水合わせをした後、ゆっくりとメダカを放しました。メダカたちは元気よく泳ぎまわっていました。

僕も早くメダカの子供が見たいなぁと思いましたが、元気よく泳ぎまわるメダカとは対照的にお父さんに元気がありません。
元気なくメダカを見つめていたお父さんにお母さんが言いました。

「またどこかでメスだけ買ってきたらいいじゃん」

どうやらメダカは全部オスだったようなのでした。