お母さんがベッドを作ってくれました。ベッドと言っても「INTIME」のような高級ベッドではなくて分厚い座布団の上に薄いシーツを敷いただけのものです。それをケージの中に入れてくれました。すごく気持ちが良くて大好きなケージがますます好きになりました。

お父さんもお母さんも、本当は、自分たちの寝室で僕たちを寝かせたいと考えています。もちろん、ケージにもクレートにも入れずに、座布団ベッドだけを置いて自由に寝かせたい、そう思っています。「わぐり」などの盲導犬候補生は盲導犬協会からケージやクレートに慣れさせるようお願いされているので、留守番や寝る時はケージかクレートに入れていますが、僕はペットなのでそんなの使う必要はありません。でも、僕をケージやクレートに入れるのには理由があることも知っています。僕は先天的に腰に障害を持っていて、いつ炎症が起こり手術しなければならなくなるかわかりません。そんな時、入院先の動物病院にはお父さんお母さんもいなければ座布団ベッドもありません。お父さんお母さんはいつか来るであろう僕の動物病院での生活に備えて、なるべく僕をケージかクレートに入れるようにしているのです。
お母さんは座布団ベッドを「わぐり」にも作ってやりたかったのですが、作りませんでした。彼女はまだ物をかじる習性が抜け切れていませんし、彼女の母親「エラ」は布切れを飲み込んでひどい目に合ったことがあります。その娘の寝床に綿の詰まった座布団を入れるなど空恐ろしくて到底できなかったのです。

彼女は、ときおり僕たちの目を盗んで、僕の座布団ベッドの上で気持ちよさそうにくつろいでいることがあります。その姿は母犬「エラ」にそっくりです。


いつもは他人の寝床に入ると「ノーだよ!」と言いながらすぐに引っ張りだすお父さんお母さんですが、なぜかその時だけは、目をそらして見て見ぬフリをするのです。