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世田谷では、ぬいぐるみを乗っけたゴミ収集車をよく見かけました。キティちゃんやミッキー君などが車の横や後ろにちょこんと乗っているのです。おそらく誰かが捨てたのでしょう。一度は愛されたぬいぐるみも必要なくなれば「ゴミ」として捨てられてしまいます。収集係のお兄さんたちは、そんなぬいぐるみたちをそのまま焼却するのに忍びなく助けてあげたのだと思います。 この度の引っ越しに際して、お父さんは身の回りのものをどんどん捨てていきました。ここで捨てないと捨てる時がないからです。意を決してそのほとんどを捨てることにしました。 お母さんは、お父さんの意を受けてほとんどの人形やぬいぐるみを処分しました。ところが、引っ越しが佳境に入ったところで、ひとつだけ捨てられていないぬいぐるみが見つかりました。普段あまり人が入らない部屋の棚の上に置かれていた「梅吉君」です。この「梅吉君」はお父さんがまだ新婚の頃、犬好きのお母さんに買ってあげたもので、人間の子供がやっと抱きかかえられるくらいの大きいものです。当時犬が大嫌いだったお父さんは、嫌々ながらも、「梅吉君」をタクシーの横の座席に乗せて帰りました。当時、マンション住まいで犬が飼えなかったお母さんは大喜びでしたが、お父さんがタクシーで帰宅したことを最近知って少し怒っていました。そんな思い出の「梅吉君」ですけど、ずーっと忘れ去られていました。 お母さんは、お父さんから「人形やぬいぐるみは原則として捨てる」と言われていたので、大きな「梅吉君」をゴミ袋に詰めました。お父さんはゴミ袋に詰められた「梅吉君」をゴミ収集場に置くと、後ろを振り向かずに歩き出しました。少し後ろ髪を引かれているようでした。 30分ほどして散歩から帰宅すると、まだゴミは収集されていませんでした。ぎゅうぎゅうに押し込まれた「梅吉君」と目が合ったお父さんは、黙ってひょいとつかみあげるとそのまま家に持ち帰りました。さぞやお母さんは怒るだろうなぁと思いましたが、お母さんはあまり怒っていませんでした。 よくわからないお父さんとお母さんでした。
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