子犬を育てる時は、叱り方が一番難しいと思います。
僕は「子犬育成部長」に任命されていますので来る子犬来る子犬のしつけをしなければなりません。犬には犬の礼儀というものがあって、それを教えるのが僕の一番のお仕事なのです。

でも、悩みがひとつあります。僕が子犬を叱ると、お父さんお母さんが大騒ぎすることです。子犬は礼儀を知りませんので、平気でいたずらをしてきます。このまま大人になってしまうと、いつか他の犬に手痛いお叱りを受けてしまいます。僕はそんなことがないように小さいうちからしっかり教えようとしているのです。
お父さんお母さんは、盲導犬協会から、子犬を「叱らないでください」と言われています。「人嫌い」になったら大変だからです。だから、お父さんお母さんは、叱ってるのかかわいがっているのかわからない叱り方をした後で、一所懸命「わぐり」の機嫌取りをしています。「わぐり」は叱られているのかかわいがってもらっているのかわからないのでキョトンとすると、「おお、言うことを聞いた。素直だなぁ」と満足しています。でも、お父さんお母さんが本気で怒ったら、僕だって近寄るのが嫌になるだろうから、あれぐらいがちょうどいいのかもしれません。
「サーガ」が子犬の時もそうでしたが、僕はやってはいけない時にはすごい形相でしかります。もちろん歯はまったく当てません。いきなり歯をむき出しにして低くて大きな声で教えるんです。でも、それを見たお父さんお母さんは、天変地異が起こった時のような真っ青な表情になり、子犬が「犬嫌い」になるのではないか、妙なトラウマができたらどうしよう、と心配し、僕にもっと手加減するよう注意します。普段怒ることのない僕が大声を出すこともさることながら、子犬がキャンキャンと大袈裟に鳴いてお父さんやお母さんに助けを求めるものだから、お父さんお母さん自身が半分パニックになってしまうんです。

将来盲導犬になるかもしれない大切な子犬ですので、お父さんお母さんの心配もよくわかります。でも、「フラウ」も「エラ」も「サーガ」もそうやって礼儀を身につけてきました。僕自身、このやり方が本当に良いのかどうかはわかりませんけど、子犬たちの態度も日を追うごとに良くなってきますし、ある程度大きくなったら精一杯遊んであげますので、少しの間だけ我慢して欲しいと思います。

僕の悩みは、お父さんお母さんを心配させないように子犬をしつけることです。
子犬を育てる時は、叱り方が一番難しいと思います。